旨いサワラは「岡山」に集まる

2019年5月9日

瀬戸内の漁村では、5月初旬の八十八夜頃に「サワラ」などが産卵のために押し寄せる様子を「魚島」とまで呼びました。
かつては、「獲れすぎたサワラを網から外すのに手間取り、競りに間に合わなかった」「獲れすぎて船に積み切れず僚船に積んでもらった」といった話があるほどサワラがたくさん獲れていたようです。

 

 

「サワラが来ないと春が来ない」とまで言われ愛されているサワラですが、岡山県の漁獲高は海に面した39都道府県のうち30位程度。
しかし、消費量は全国の3割、全国一と言われています。
そのため、「旨いサワラは岡山に集まる」「鰆の値段は岡山で決まる」といった言葉があるほど。
瀬戸内や紀州、豊後などでサワラが獲れたら「岡山が獲れた」と言われたこともあるとか。
岡山の「サワラ愛」が生んだ言葉ですね。

 

 

「塩焼き」「西京焼き」「照り焼き」など多彩な調理法で一年中愛されるサワラ。
もちろん岡山の郷土食「ばらずし」の具としても、なくてはならない存在です。
ところで、岡山で刺身とはサワラを指すというほど「サワラの刺身」が一般的です。
柔らかな身だからこそ厚めに切られたサワラの刺身。
爽やかな香味と甘味は、決して他の魚では味わうことができません。
しかし、柔らかく、傷みやすい「サワラ」は、「塩焼き」や「西京焼き」など火を通す調理法が一般的なようで、岡山のサワラ食文化はとても特徴的だと思います。

 

生食が一般的な岡山のサワラ。
目の前の海で豊富に獲れ、新鮮さを保てたことも大きな要因だと思います。
瀬戸内で漁獲されるサワラは、5月頃産卵のため太平洋から豊後水道や紀伊水道を通って瀬戸内海に入ってきたものです。
そして、この時期に多く捕獲されていたことから魚へんに春「鰆」という漢字が当てられたのでしょうか。
瀬戸内海に入ってきたサワラは岡山県沖の備讃瀬戸や兵庫県沖の播磨灘で産卵し、11月頃太平洋に帰って行きます。

 

とても豊富に獲れていたサワラですが、その漁獲量は減少しているのです。
瀬戸内や岡山におけるサワラの漁獲量は昭和61年6,255tでした。
しかし、平成10年、196tまで急激に減少。
10年ほどで実にピーク時の3%にまで減少しています。
岡山県においても昭和61年のピーク時535tあった漁獲量は平成11年5tまで減少。
ピーク時の1%未満に過ぎない漁獲量となってしまいました。

 

出典)岡山県農林水産部水産課「サワラ漁」について
http://www.pref.okayama.jp/page/detail-22459.html

 

そのため、様々な資源回復の努力が行われています。
獲り過ぎを改善するための方策として、網目を大きくして小さなサワラは獲らないことや、秋漁を禁止して秋に回遊してくる小さなサワラ(サゴシ)を獲らないなどが実施されています。
また、サワラを増やす方策として、捕獲したサワラの卵と精子を混ぜ合わせ海に返す受精卵放流。
また、稚魚を大きくしてから放流することも行われています。
サワラの稚魚を15日間ほどかけて全長10cm程度まで育ててから放流するのですが、エサは冷凍イカナゴが使われているようです。
近年イカナゴが不漁のためエサの確保が心配ですね。
また、魚の産卵や生育の場所で「海のゆりかご」とも言われるアマモ場の造成も行われています。
備前市日生町の日生町漁協には、30年以上のアマモ場造成事業に対し平成28年海洋立国推進功労者表彰(総理大臣表彰)が贈られています。

 

これらの努力によって、平成27年の岡山県のサワラ漁獲量は100t弱にまで回復しています。
最悪だった平成11年の漁獲高5tの20倍です。
しかし、ピーク時の535tの10%に過ぎません。
まだまだ道半ばといったところでしょうか。

 

 

ところで春サワラの爽やかな味わいに対し、秋から冬のサワラは、とろけるような濃厚な味わいがあるように思います。
この時期のたっぷり脂が乗ったサワラの刺身は、少しお醤油に触れただけで、そのお醤油にはぱあっと油膜が広がるんです。
あらゆる季節で喜びを与えてくれるサワラ。
いつまでも愛される存在でいてもらうため、海に起こっていること、海で行われていることに注目していきたいと思います。